あらすじ
　クリスマスを目前にして、リミットのクラスもプレゼントの話題で持ちきりだが、そんな中でただひとり、川田美也子だけが打ちとけずに沈んだ表情のままだった。実は、美也子の両親は離婚していて、一年に一度だけ、クリスマスイブに再会するのだ。なんとか両親を仲直りさせたい美也子は、親子３人の人形を作って楽しかった日々を思い出してもらおうと懸命だった。
　リミットがパパに贈ろうと用意していたのは、花屋さんの手ほどきで苦心の末に咲かせた三色のバラ。パパの驚く顔を想像すると自然と顔もほころび、指折りクリスマスイブの訪れを待つのだが、ある日、リミットはうっかりと出会いがしらに美也子にぶつかって彼女の人形を壊してしまう。一転、クリスマスの楽しみも消し飛んで自責の念に駆られていくリミットだったが、絶望してチャペルで祈りを捧げる美也子を見て、天使に姿を変え、パパへのプレゼントだった三色のバラを、壊れた人形の代わりにといって差し出すのだった。

みどころ
　リミットがバラの鉢を前にして、泣きながら父親あてのカードを破り捨てるシーンの神々しさは、小学生のときに本放送で見て以来ずっと忘れられない。娘の健気な行動をしっかり見守っていて、プレゼントがないのだと涙ぐむリミットを暖かく包み込んでやる西山博士はまさに理想的な父親像で、私事だが自分自身が娘をもつ身になってみて、また感動もひとしおである。
　クライマックスのＢＧＭは「アヴェ・マリア」。そしてリリカルなオープニングアレンジを短くはさんで「きよしこの夜」に変わり、リミットと西山博士が降りしきる雪のなかへと消えていくラストシーンは、ただただ美しかった。
　アクションよりも心情的な面に重きがおかれたエピソードだったにもかかわらず、付録的に挿入されたミラクルランの描写も丹念で、まさに天才アニメーター小松原一男の面目躍如たる最高傑作エピソード。亡くなった氏の追悼イベントで、第1話と第20話だけが上映されて本編が無視されたのは許しがたい暴挙だった。（本当は、東映アニメーションのイベント貸出用16ミリフィルムが第1話と第19〜22話しか用意されていないことに起因すると思われる。）
　なお本編は、新聞のテレビ番組欄では「礼拝堂の天使」とアナウンスされたが、完成画面で使われたタイトルは「チャペルの天使」。

ヘンだぞ !?
　リミットのクラスでは、誰も彼も、自分がもらうプレゼントよりも親にあげるプレゼントのことで頭がいっぱいみたいなのだが、欧米ではいざ知らず日本では、親にプレゼントをあげようなんて真剣に考える小学生はほとんどいないのではないだろうか。