あらすじ
　その朝、登校前にもしっかりと約束をしたのに、なぜかパパは父親参観に姿を見せなかった。「早く来ないと終わっちゃうじゃない」と飛ばしたマジックベレーも、西山博士のもとに届かず戻ってきてしまう。光子たちから、平均台の完璧な演技に「機械人形みたいだ」と陰口を叩かれ、父親が来ないのは愛情のない証拠だとからかわれたリミットは、昂る感情を抑えきれずに、研究所に戻っていた父親を激しく責めたてる。
　西山博士は事情を説明しようとするが、機械である自分は愛されていないと思い込んだリミットは聞く耳を持たない。「機械のあたしにはこんなものを作ってやれば喜ぶと思ったんでしょ」とマジックベレーを投げ棄て、西山博士から平手打ちを浴びせられたリミットは、「パパなんか大嫌いよ!!」と言い捨てて飛び出していく。
  リミットは、死んだ母親を懐かしんで丘の上で泣いたあと、日が暮れてから町にもどり、同級生の山川ヒロシが母親と一緒に暴力団から店を守ろうとする姿に感銘を受けて助けてやる。自分の行動を省みて、親子の絆について考えながら歩きつづけたリミットは、湯本みどりと出会い、西山博士が父親参観に行けなかったのは、リミットのために、アメリカの研究所に来ないかという誘いを断わるためだったのだと聞かされる。あらためて父親の自分に対する愛情を噛みしめたリミットは、西山博士の姿を求めて海岸へと急ぐのだった。

みどころ
　シリ−ズ前半を代表する傑作。それまでの５話では断片的にしか出てこなかったリミットのコンプレックスが、はじめて真っ正面から取り上げられ、サイボーグであるがゆえに父親への不信を募らさざるを得ない哀しさが見事に描き出された。「どうせあたしはパパのつくった機械ですからね」と自嘲的に突っかかるリミットの姿は、同時代の他アニメには例を見ない特異なものであるし、ラストで西山博士が打ち明ける決意も感動的。後半１５分間は何回見ても涙なしには見られない。
　西山親子のよき理解者であるみどりさんが印象的で、リミットの思わぬ逆上ぶりに狼狽した西山博士が救いを求めるようにみどりさんの顔を見る場面とか、リミットを捜しにいこうと立ち上がった西山博士を見てみどりさんがホッとした表情を見せる場面など、細かい演出が凝っていた。「ミラクル少女リミットちゃん」は視聴率的には成功しなくて２クールで終了したが、当初の予定では、西山博士はみどりさんと再婚することになっていたらしい。
　端名貴勇が作画監督を手がけた最初のエピソードだが、端名リミットは、やや小柄な身体つきと、クリッとした目を大きく見開いた表情に特徴があり、シリアスな表情を得意とした小松原一男の作画とは対照的に、子供っぽい可愛らしさが前面に出ていた。深刻な内容の本編では必ずしもその特長が十分に出ていないが、冒頭で茶目っけたっぷりに西山博士の背中をひっぱたいたり、ベランダからウィンクして見せる姿が典型的な端名リミット。

ヘンだぞ!?
　朝8時半からの父親参観なのに、しっかりとその前に研究所に出かけて仕事をしていたパパ……実はやっぱり「最初から来る気はなかったのよ！」（リミットちゃん談）だったりして。